クローズアップ
スピード・品質・ トレース…出版物流高度化の極限を追求
日本出版販売・王子流通センター“NEXT”
一国の文化・学術・芸術,そして本誌のごとき専門誌や一般誌ジャーナリズムまでを支える,かけがえのない出版流通。わが国には減少傾向と言えなお4,000強の出版社があり,それを販売する書店は17,000社以上がある(コンビニ,大学生協,キヨスクなど除く) 。
両者をつなぐサプライチェーンは,このままでは網の目のように複雑化し,物と情報と金の流れは錯綜してしまうだろう。だが販売額ベースでその9割が全国31社の取次店を経由し,整流化されているのがわが国出版流通の特長だ(残りは卸経由キヨスク等) 。
しかもその9割のうち8割までが,日本出版販売(以下,日販)とトーハンの大手取次2社によってカバーされているのは周知の通り。国内では珍しく欧米的な寡占化・集中化が進展した業界であり,サプライチェーン全体の効率化・システム化推進に寄与している。
だが第1部・第2部で見た通り,出版業界は長期売上低迷・下がらない返品率に悩み抜き,業界の存続をかけた抜本的改革,サプライチェーン最適化に改めて取り組むべき局面にあることがコンセンサスとなってきた。
RFIDの導入もその一案だが,本格展開には今少し時間がいる。今すぐ,まず自分からできることがあると考えた取次最大手の日販は,前稿までに紹介したトリプルウィン・プロジェクトなどの取組みに加え,09年2月までに書店向けの書籍発送拠点である王子流通センターをリニューアル,本格オープンした。
「このリニューアルプロジェクト王子NEXT”は,弊社が06-08年の中期経営計画の柱の1つとして3年がかりで進めてきたものです」と同社流通計画室流通計画課の市原真也課長は説明する。
「 “本業革新を支える新しいインフラ・バックヤードの構築”を目的に掲げ,王子流通センターの構内に4,000坪の新棟を構築するのと合わせて既設棟・システム・マテハンなど設備もリニューアルし, “情報・物流システムの全面刷新”を実施することにしたんです」
王子流通センターは1970年に王子営業所として開設後,74年の2号館増設で現名称に変更。89年に高速自動仕分け機・マルチソーターを擁した王子ハイテクセンター(3号館)をペーパーバックス(PB,文庫・新書・コミックス)専用センターとして稼働。98年には一般単行本向けに新型マルチソーター・MS2を新稼働させている。
そして今回,新棟が構内4号館として増設されたもの。 「これによって別拠点のWeb-Bookセンター(オンライン書店向け,07年増強)を含めた書籍送品センターの面積は計22,000坪に,在庫量は80万点・800万冊となり,業界最大規模になっています」 と同課の太田紀行係長は話す。
この間,物流を区別している雑誌の発送拠点としては,コンビニエンスストア向けの「CVS流通センター」 ,一般書店向けの「ねりま流通センター」を稼働。書籍・雑誌で文字通り国内最強の出版物流インフラが整えられている。
*この続きはマテリアルフロー6月号でお読みいただけます