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RFIDのアメリカン・テイスト(6)
Column 「ちょっとマテフロ」
RFIDのアメリカン・テイスト
その6/米視察ドタバタ紀行・メンフィス番外編2
謹賀新年! 本コラムは今年も全力疾走で参ります。年をまたいだ米国RFID・物流シ
ステム視察紀行、メンフィスを端緒に押し広げる米国と日本の文明・文化エッセイをもう
ひとくさり。
*
戦後、アメリカ文明を積極的に(ミソクソに)移入してきた私たち日本人にとって、立派な
道路、近代的な高層ビルで構成される米国の大都市は、ニューヨークほど摩天楼が集
まれば別ですが、さほど珍しくもないとお感じではありませんか?
「それにしてもなぜ、こんなにも珍しくないのか」筆者は初めて米国を訪れた5年前、は
たと自分自身に問いました。十数回訪れているヨーロッパでは、色々な街のたたずまい
に今も飽きることなく、魅了され続けているのに。
もちろん欧州と違い、米国文明には先住民のそれ以外、近世以前の歴史文化的蓄積
がないという問題もありますが、それだけではない。
改めて思い至ったのは、日本が大戦後の焼け野原を再構築する段から今日まで、道
路・建物、あるいは社会システム面などで驚くほど、乾ききった日本の国土はアメリカ文
明を吸収し、一面では自他の区別もつかないほど、もはや自覚もできないほどに、それ
ほどに一体化してしまっているからではないか、ということでした。
それは善悪とか好悪を超えた、現実なのだろうと思います。おそらくこれに似た状態
が、米国だけでなく日本の文化や制度(たとえば交通標識など)を積極的に取り入れた
韓国の社会にも見られるのではないでしょうか。イヤだと今言っても詮無いことで、建国
の先人たちがそれを選択した、せざるを得なかったことで今日の姿につながっている。
* *
もともとインディアン達を追い出し、建国してから230年にしかならないアメリカ合衆国
(USAの直訳では合「州」国)。地平線まで果てなく続く荒野を前に、歴史的遺産なしに
ゼロから村を、街を、国家建設を企てた彼らにとっては、荒野を街に変える文明の力、
開拓/収奪のフロンティア・スピリット、手向かう者と戦う勇気/武力……それらが人民
を統合し国を支える国家精神、旗印となっていったのでしょうか。
アングロサクソンを中心とする英国からの移民たちがそのノリのまま、産業、科学、技
術、政治の力を拡大し続ける中で、近代性の申し子と言えるアメリカ的な大都市が生ま
れていきます。
しかしメンフィスは、それらの都市とは大きく違う。南部の歴史と黒人文化が白人文化と
混交し地に根付き、味わいのある調和を保っているその様子。この町はそんな歴史と
「基盤」を持つ安定感があり、なんだか懐かしく、一方で私たちの異国情緒を、巧みにく
すぐってくれます。ようやく、「知りたかったアメリカ」に来た、という気さえしました。
* * *
もう1つ、この町には信心深い黒人達が通う教会が多いことを前にも紹介しました。一
見同じようでも、キリスト教系の様々な宗派が分立しているそうです。さすがにホテルの
ある町の真ん中にはさほど見かけませんでしたが、実は今回、1泊だけでもホテルを取
るのに苦労しました。
それはちょうどこの1週間ほど、ある宗教団体の年次大会みたいなイベントがあり、全
米各地から何万人もの信者達が集まってくるので、小さな町のホテルはあらかた、半年
以上前から満員状態だったらしいのです。
だからでしょう、メンフィス空港を降り立ったときから、美しい帽子や晴れ着で着飾った
黒人のご婦人や、スーツでビシッとキメた紳士の姿が見られました。われわれの泊まっ
たホテルもそんな人達で一杯。私はエレベータ前で、マルコムXのように長身で毅然とし
た紳士連の一人から、”How are you?”と声を掛けられたのですが、どう対応すべきか
とっさに頭が回らず、あいまいに頷き返すのが精一杯でした。
なお、日々身の置き所が狭くなっていくのにお悩みの愛煙家に情報ですが、世界的に
ますます厳しくなっている「禁煙化」の流れで、ホテルの喫煙ルームもない、ほとんどな
いところばかりでしたが、メンフィスは喫煙者にも優しい町で、大丈夫。空港内にタバコ
の吸えるカフェがあったのは、メンフィス空港だけでしたね。
* * * *
翌朝空港に向かう途中、好天の中でミシシッピ河畔の公園に立ち寄りました。結構上流
になるからか、川幅はさほどでもありませんが、これがあの、人と心、物と文化を運び、
ハックリベリー・フィンが冒険し、支流も入れると世界最長の規模を持つ、ミシシッピ川
かと、実物に改めて眺め入ったものです。
かつてこの川で船が難破したとき、自らを省みず人命救助にあたった功労者を讃える
オベリスクがあり、その傍らで記念撮影をしました。
そしてこの日はメンフィスからシカゴへ、約2時間のフライトでしたが、また驚いたのはそ
の間数百キロにわたり、山らしい山1もつなく、えんえんと平地、丘陵、林、そして何より
農地が続いていたことです。これでは大規模農業による生産高が圧倒的なはずだと、
改めて納得しました。ほんとうに果てがない、かつては荒野だったであろう地平を、こん
な農地に変えたフロンティアたちの苦労もまた、並大抵ではなかったでしょう。
いや、アメリカは広い。
(次回につづく)
月刊マテリアルフロー 編集長
菊田一郎
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