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TOP > コラム > RFIDのアメリカン・テイスト(14)

08/03/04 

Column 「ちょっとマテフロ」

RFIDのアメリカン・テイスト


その14/米視察ドタバタ紀行;ウォルマートRFID対応の現実(まとめ)


米国RFIDドタバタ紀行・ウォルマート編は、お陰様でグーグル検索で結構上位にも顔を

出し、いろいろ反響も頂きました。そんな声もご紹介しながら、ぼちぼちウォルマート編

のまとめに行きたいと思います。





前回筆者は、巷の悲観論・否定論に首を振り、「ウォルマートはRFID+ネットワークシス

テムによるサプイヤーとの協働の基盤を整えた」とする、ポジティブな見方を提示しまし

た。これについて筆者の耳元にはいくつか賛同の声が届き、ほっとしています。もっとも

反論については、胸に暖めておられる向きが多いのかも知れません。


わが「マテリアルフロー」3月号に書いて本コラムではまだご紹介していない関連内容と

して、店舗とDCの約3分の1にRFDシステム導入・サプライヤー上位600社のタギング開

始で展開に一息ついた感じもあるウォルマート・ストアーズ本体に対し、ウォルマート系

列のホールセールス店舗チェーン「サムズ・クラブ」では今、RFID導入を一気に加速さ

せています。


同チェーンのテキサス地域40店舗向けに07年11月から、サプライヤー700社を対象に

全パレットへのタグ貼付納品が開始されているのです。導入店舗は順次拡大し、08年

11月までにケースタギングも開始する計画。


業務用店舗のサムズ・クラブでは、ウォルマートより扱いSKU数が小さく・販売単位が大

きいので、ROIがもっと出しやすいと思われます。


ちょっと驚いたのはこの1月7日付けで、ウォルマートが700のサムズ・クラブ向けサプラ

イヤー(ウォルマートのサプライヤーと大半は重複)に対し、非タギングパレットには「課

金」すると発表したこと。当面はパレット当たり2ドルですが、課徴金による「一気呵成の

強制力発揮」とも言えます。


強気ですねえ。四半世紀以上前の、歴史的なバーコード導入計画を彷彿とさせます

(ウォルマートはバーコードの時も貼らないものに課金しこれをドライブ、そのシステム

が今も稼働しているそうです)。ここからも、RFID活用に対するウォルマートの確信が感

じられます。


*               *


かと言って気になることはいろいろあります。本誌の特集でいくつか紹介した論点のな

かでも、たとえば「店舗の現場オペレーションに、RFIDがほとんど意識されていなかっ

た」こと。日本のRFID導入店舗なら、ゲートをタギングパレット・ケースが通るたびに、

「全部読めたか」といちいちチェックするでしょう。でもウォルマート店舗では恐らく、行っ

ていない。「RFIDシステムを運用している」という自覚が余りないのです。


ところがウォルマート本社では、読み取り情報での商品トレースをほぼリアルタイムに

実行し、ヒューレット・パッカードやペグ・ペレゴなどのサプライヤーと情報を共有してい

る。ワーカーには複雑なオペレーションや精緻な判断をはじめから期待しない。文字通

りのオートID、「自動収集」を追及しているのです。


また、前にも少し書きましたが、段ボールクラッシャーのリーダアンテナが撤去されてい

たらしいこと。これは「クラッシャーのリーダが近くを通った空でないケースタグも読み

取ってしまうため、外した」ものらしく、想定通りに現場が動いていない現実もかいま見

えます。


それから、DC・店舗までの商品状況可視化・情報共有が実現されたとして、サプライ

ヤーはどこまでそのメリットを享受できるか。保有在庫を最適レベルにコントロール可

能になるはずですが、最終的には、工場での生産数量自体を販売実態に即応させるこ

とで、「最低の在庫で最高の売上」という究極のメリットを獲得できるはず。


でも生産計画を「月次」で立てている限り、今日までの販売データを生産数量に反映で

きるのは、1~2か月後。市場即応の機動的な対応は難しいと言わねばなりません。


さらに今後、EPCISによる情報共有システムがEPC会員企業のビジネスに本格導入さ

れ、サプライチェーン工程での世界的な企業間情報共有が実現される日が来たとした

ら、どうなるか。現在ウォルマートは、EPCglobalがようやく標準化したこの情報共有の

仕組みを使っていません。自前の巨大情報共有システム「リテールリンク」があるので、

要らないのです。


それがリテールリンクなしでも、メンバー企業には可能になるとしたら。


多大な先行投資によって勝ち得たウォルマートの優位性が、一部失われることになる

のではないでしょうか。この問題は今後のEPCglobalの動きに、微妙に絡む可能性もあ

ります。この辺り、詳しくは3月号特集に書いているので、ご覧下さい。


*          *          *


こうした米ウォルマートの動きに対し、欧州の雄、世界第2位の小売業・メトロもDC・店

舗でのRFID実導入を進展させており、アイテムタギングを含むその取り組みはある面、

ウォルマートを越えているとの評価もあります。


そこで本誌はこの春5月、欧州に「物流システム・RFID視察団」を派遣することにしまし

た。3年に1度開催される世界最大のイントラ・ロジスティクス(マテリアルハンドリングな

ど構内物流システム設備、情報システム、RFID、サービス)展示会「セマット」を見た

後、独メトロやオランダのソニー・ヨーロッパでのRFID最新システムの稼働状況を視察

する計画です。


本Webサイトのトップページから視察団のバナーに入ると募集概要が見られますので、

ご興味ある向きはぜひ参加をご検討下さい。またまた「ドタバタ紀行」が書けそうです。


(次回につづく)


月刊マテリアルフロー 編集長

菊田一郎