08/09/30(242)
Column 「ちょっとマテフロ」
ヨーロッパ物流・RFID紀行2008
その15/オランダ出版業界の全冊タギングにビックリ(4)
いよいよ出版タギング・ビックリ編も、今回と次回はクライマックスに。大手書店チェー
ンBGN/セレクシューズのドミニコ店を訪れた一行は、まずそのたたずまいに度肝を抜
かれ、建物を見上げるのでした‥‥。
*
視察団一行がオランダで宿を取ったのは、まあ当然と言える首都アムステルダム。
そこからマーストリヒトまで、直線距離では約300km・最短3時間余りなのですが、ソ
ニーヨーロッパとセントラルブックハウス(CBH、先述)を訪問後、4時過ぎに出て、オラ
ンダ最南端、ベルギーとドイツの国境を分け入ってくびれ伸びた領土の先っぽにある
マーストリヒト(条約で有名ですね)に向かったわけですが、高速道路は結構工事中が
多かったりして、お店に着いたのは、もう閉店時間の6時少し前でした。
しかし由緒ある町並みを少し歩き、大型バスの入れない道の奥に姿を現したのは、
中世にできた古い修道院。その門前アーチにSelxyz(セレクシューズ)というしゃれた看
板が掲げてあります。
そう、ドミニコ店は13世紀建造のドミニコ派修道院を改装した店舗なのです。18世紀
のフランス革命前後、マーストリヒトは一時仏領となり、仏軍騎兵隊がこの教会を使用
していましたが、その後は市の所有物となり、ギロチン台などの倉庫、病院、スポーツ
試合場などに活用。大戦後はカーニバルの際に親が小中学生の子供を預ける施設と
なった経緯から、ダンスパーティの後、「初めてのキス」をここで経験し、今もこの建物
に愛着を持つ市民は少なくないとか。
しかし以後25年間は自転車置き場として使われ、建物は荒廃していました。そこに近
年、市とデベロッパー、政府が遺跡保存と有効利用に取組むことにして補修を進め、
ドミニコ店が06年に書店として誕生する、という経緯を辿ったそうです。せっかくですか
らその写真をご紹介しておきましょう。

ね、なかなかなもんでしょう。これも話には聞いていたのですが、いや、はるばるマー
ストリヒトまでやって来た甲斐があったというもの。なんて思ったのはRFID現場を見て
さらに感動する前のことなのですが。
ともあれ、可能な限り原状を生かしつつ機能的に使えるデザインを凝らし店の内部も
素晴らしく、圧倒的な美しさで私たちは魅了されました。わが身に引き当てるため、
「京の五重の塔が紀伊国屋書店に改装された場合」を想像してみてください。
* *
話を戻しましょう。CBHからドミニコ店に届いたタグ付き書籍は、まずトンネルリーダで
一括スキャンし、ASN情報と照合。以前は納品書と目視で逐一付け合わせていまし
た。CD付きの本など2~3%は読取れないものもあり、その場合はバーコードで1冊ず
つ検品するそうです。終了後はカテゴリーごとに仕分け、所定間口に棚入れしていき
ます。
棚入れ時、そして全数棚卸の際は、カート式RFIDリーダを使って書籍タグの読取り
を行います。ポイントはその時、棚や台の裏面に貼付したロケーションタグを合わせて
読取り、何が今どこに何冊あるか/棚入れしたか、自動的に素早く把握/記録できる
こと。本が間違った場所に置いてあればアラームが鳴ります。
方形の手持ちアンテナで書籍の側面・背面・前面数cmのあたりをなぞるだけでよく、
全数棚卸は週2回の頻度で実施しているので、新入荷本も含め現在状況が高い精度
で把握可能に。以前は本を1冊ずつ取り出しバーコードをスキャンしていたので、棚卸
には1日閉店し、30人で8時から6時まで=300人時を要していたのが、本システムでは
開店時に、1人で6時間=6人時へと、50分の1に作業時間を激減させています。
現在、新型のハンディRFIDリーダをナイメーヘン店でテスト中であるそうで、08年10
月頃にはドミニコ店でも導入の予定。「そうなれば、このカートリーダもトンネルリーダ
も不要になります」と、店舗責任者のトン・ハルメス氏は話していました。
さらにフェーズ2では携帯電話で在庫を検索し注文、その日に取りに行けるサービス
でオンライン書店に対抗するなど、将来構想も盛りだくさん。RFIDのあるゆる可能性を
追求するそのチャレンジに、私たちはスタンディングオベーションを送る思いで、教会
跡の門を出たのでした(詳しくはマテリアルフロー9月号にルポあり)。
(次回につづく)
月刊マテリアルフロー 編集長
菊田一郎
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