小学館・昭和図書の果敢なRFIDチャレンジ。でもタギングコストはペイできるのか、疑問
に思われる向きも多いのでは。しかし大竹社長はこの点、実に楽観的。最後にその今
後と展望について、聞いていくことにします。
*
前回までにご紹介した小学館の新刊「ホームメディカ 新版・家庭医学大辞典」(11月18
日発売)に実地タギングすることになったRFタグには、UPM社のEPCglobal Gen2規格イ
ンレイを使ったDNPのタグラベルが採用されました。装着費用を入れて、現状の1枚単
価は40円くらいだそうです(下の写真)。

大竹社長は「将来的に単価は20円前後までは下がるだろう」と期待していますが、前回
も述べたとおり、その費用は出版社である小学館と昭和図書が負担します。
「しかし特別定価6000円の本に40円のタグと、比率は1%にも満たないので、本が売れ
ればコストは十分吸収できます。それに現在のような返品・廃棄が減れば、高価本でな
くともコストは捻出できると思います」と同氏は力強く言い切ります。
「毎年1700億円、原価では2割として340億円分の出版物が返品後に廃棄されているの
ですから、(それを削減することで)十分RFID導入のタグの原資になります。予算はここ
にある、誰も出さなくていいんです」
では今後流通側が負担する、RFIDリーダライタの費用はどうか。
「現在のバーコードスキャナとソフトを入れ替えるだけですから、今すぐでなくとも次の更
新のときに、各社がさほど負担増なしに導入することは可能でしょう」
なるほど! こう聞くと、そうか、と膝を打ちたくなりますね。実際にはそう簡単に行か
ないとしても、「埋蔵金」以上に心強い「あて」になる気がします。
* *
もう一つ、出版物へのRFID活用では、検品作業の効率化効果が非常に大きいことも、
魅力になっています。
昭和図書では直営書店・ブックハウス神保町ですでに昨年から在庫にRFタグを付けて
実験運用していますが、従来20人で1日・8時間かかっていた棚卸が、女性1人・2時間
半でできるようになったとのこと。そのお陰で同店では毎朝、棚卸を行っており、正しい
在庫情報がいつでも見られるようになっているそうです。
さらに「将来は、ゲートリーダで盗難防止システムに活用することも可能」という大竹社
長の構想は、オランダの書店・セレクシューズですでに効果が実証されています。
* * *
本コラムと月刊「マテリアルフロー」では2001年あたりからRFIDの可能性を追い続けて
きましたが、つい最近まで、「まだ使いものにならないじゃないか」といった厳しい声を何
度も頂きました。数年来の大竹社長の取組にも、ようやく業界での理解が広がってきた
様子なのは、ある意味「戦友」として実に嬉しいことでした。
すると大竹社長は「いや、今でもまだ、業界の8割はRFID導入に批判的だと思います」と
しながら、「しかし出版市場が11年連続マイナスという現実を前に、ここまで来たら何で
もやらないと、という声が出てきました。厳しい環境がある面追い風になり、中でも小学
館の相賀社長がRFID導入に同意してくれたことは大きかったと思います」
潮目が変わるタイミングであったのか、書店の組合の日書連も、以前買切制への取組
みがうまく行かなかったこともあり今回の小学館の新企画には大賛成で、取次もRFID
関連ベンダー各社も、RFタギングの取組みに大いに協力してくれるようです。
ただ出版業界ではもちろん、消費財サプライチェーンへのRFID本格導入はわが国で初
めてのことですから、少しくらいの問題は目をつぶってくださいね」と大竹社長は笑いつ
つ、「来年早々、出版業界に進捗状況を広くアピールして参加の輪をさらに広げ、実際
の返品減少につなげたい」と決意を語っていました。
同氏によると、わが国出版業界で返品を認める委託制度が始まったのは、ちょうど今
から100年前の、1908(明治41)年のこと(版元は大學館)。社会情勢が大きく変わった
今、新しい取組みを始めてもいい潮時ではないでしょうか。
(*記事の全容は「マテリアルフロー」10月号に/次号につづく)