流通研究社の物流ポータルサイト□□Logistics System Station□□

WWW を検索 LSSサイト内を検索
TOP > コラム > 新生・日本郵便の現場改善チャレンジ(4)



09/01/27(258)

Column 「ちょっとマテフロ」

新生・日本郵便の現場改善チャレンジ

その4/報道されない努力と成果



さて、マテリアルフロー1月号からの日本郵便・三郷支店のJPS導入・改善現場レポー

ト抜粋ご紹介、そろそろ最後となります。

今回は貯金保険課の「びっくり改善例」と、5年間の成果についてまとめてみましょう。





◆貯金保険課外務のセルワゴン導入

 06年のこと、三郷支店内で郵便課・集配課とは別室に事務所を置く貯金保険課で、特

筆すべき「事務部門の改善成果」が生まれました。

貯金・保険の担当社員には、最近の銀行などと同じく厳しいコンプライアンス(法令順

守)が求められています。管理者は四半期に一度、社員の机の引出し検査を義務付け

られているそうで、私物だけでなく、「期限切れのパンフレット」が見つかっても持ち込み

違反となり、最悪の場合、外務員個人が営業停止になると言いますから、半端ではあり

ません。

そこで同課では「ムダ・悪さの根源を元から断つ」というTPS/JPSの発想で、「それなら

机と引き出しをなくしてしまおう」とばかりに、自ら「机を廃止」し、最小の天板と透明引出

しからなる「セルワゴン」を作成し、導入したのです。

 ここではBefore & Afterの写真をお見せできないのが残念ですが、今まで普通の事務

所と同じく、上司や課員の引出し付き事務机と椅子がずらりと並んでいた部屋から、き

れいさっぱりそれらを撤去。代わりに自前のセルワゴンを並べ、すべて立ち作業に。必

要なものは別に設けた備品・書類置棚にきちんと整理し、保管するようにしました。

「これは画期的だ、と内外から高く評価されました。視察に訪れたヨーロッパの銀行関

係者は“とてもここまで徹底できない”と、またある銀行のCEOは“うちの銀行でも導入し

たい”と言っていたそうです」と渡辺支店長。


◆残された課題・見える化⇒平準化への挑戦

しかし、なおも残る課題はあります。TPSでは「業務の平準化」を重視しますが、郵便物

はわれわれ顧客が必要に応じて出すものですから、日々変動する当日の到着量に対

応するほかなく、届く郵便物の量そのものをコントロールし、平準化することは不可能だ

からです。

三郷支店ではそれを「原単位化」と「作業進捗管理板」によって「届いた量を直ちに見え

る化」し、可能な限り効率的でムダのない作業を行う体制までは整備しました。

「従来は無理とされてきたのを、3~4か月分のデータをフルに活用し、1パレットに何が

何通入っているか全部調べて平均化し、パレット数から大体の通数を計算する早見表

を作成。原単位ごとにチップを置くことで、その朝届いた仕事の量、目安時間が迅速に

確定できるようになっています」(同)

これだけでも大きな効果がある三郷支店の大ヒット作であり、他局への横展開も検討さ

れている由。しかし「平準化」はどうするか。人員は過去の実績・傾向から予め一定数

を配置しており、今日は多いからとすぐ人を増やすことも容易ではありません(もちろん

応援は可能)。

そこで三郷支店では、一定割引を適用する代わりに配達日数が猶予されている企業の

DMなどにつき、当日の到着数量によって配達量を調整し、平準化の努力をしていま

す。が、限界がある。


*             *


そこで筆者は考えました。民間企業の物流センターであれば、入出荷数量が顧客次

第で事前に分からないのは同じでも、「事前出荷情報(ASN)」が前日届く仕組みにして

いることが多く、ある企業では、これをもとに翌日の人の手配・現場の準備に即、反映さ

せています。

 郵便事業でも、全国から各局に差立てる郵便物は区分時点で分かるのだから、この

数量データを統括支店の区分終了時点で、全国の発着支店間でネットワーク共有化

し、到着予定数量を半日前にとらえることも、可能では?

 そう問うてみると、「ええ、実は今、それを本社に依頼しているんです。が、しばらく時

間がかかるとのことでした」と渡辺支店長は打ち明けます。日本通運など大手物流事業

者とのアライアンスも開始した今、民間事業者とのノウハウ共有を進める中でも、さらな

る進化は期待できそうです。


◆三郷支店・5年間の改善成果

 以上のような5年間にわたる改善の取組みにより、三郷支店はどんな成果を生み出し

たのか。編集部は今回とくに、実績データの掲載許可を得て記事の最後に掲載しまし

た。地方では減少傾向にある取扱物数は、関東・近畿圏では増勢を続けており、その

関係から人件費を見る必要があります。

生産性は1年目から3年目まで、続けて年10%の改善を達成、その後も5%、3%以上の

改善を続けており、08年度の改善目標は3%に対し、すでに昨9月末で3.2%を達成して

いました。

ただしその工程の生産性が5%改善されても、生み出した余力は他の業務に振り分ける

ことも多く、そのまま人件費の5%削減に直結するわけではない、というのが難しい点。

 その上で原価低減の実態を反映するのが、人件費。首都圏ではここ数年、人件費単

価の上昇、通販カタログなど冊子小包取扱の大幅増加により、他局では年3~7%の上

昇が続いているそうです。その中で、三郷では05年あたりから改善の効果が出始めて

増勢に歯止めがかかり、06、07年には小幅ながら削減を達成。5%以上取扱物数が拡

大する中で、しかも他局では数%上昇する中で人件費の削減を達成したこの結果は、

実質的に数字以上の改善成果を示すものと言えそうです。


*           *           *


 さて「マテリアルフロー」誌では2月号で引き続き、「日本郵便・JPS導入の真実」のタイ

トルで全面特集を組むことにしました。キーマンインタビューと松山西支店の現場詳細

ルポで、そのチャレンジの真の姿を浮き彫りにするこの特集、ぜひご覧いただければと

思っています。


(シリーズ終わり)









 




月刊マテリアルフロー 編集長

菊田一郎



 

 


バックナンバー

>>最新号 >>2008年 >>2007年

ご意見・ご感想

ご意見・ご感想はこちらからお願いいたします。

お問い合わせ