09/02/24(262)
Column 「ちょっとマテフロ」
物流に“活”入れるトヨタ生産方式
その1/張会長が言い切る「TPSの原点は物流」
月刊「マテリアルフロー」ではこのところ、トヨタ生産方式(TPS)に関して基礎の復習か
ら、日本郵便、イトーヨーカ堂など異業種展開の成功事例を追いかけ、好評を得ていま
す。TPSが日本各地の物流現場に活を入れ、蘇らせているんですねえ。
*
この3か月ほど、日本郵便の2つの現場、イトーヨーカ堂のアパレルと生鮮品物流セン
ター、それに建材卸の物流センターと、数か所を回って現場改善の取材を続けていま
す。そこではいずれも、大なり小なりトヨタ生産・物流方式の導入に挑み、さらに独自の
工夫を加えて、驚くほどの改善成果を挙げていました。
ちなみに、イトーヨーカ堂のお店と物流現場でのTPS導入成果については、同誌3月号
(3月1日発売)で詳しくレポートします。
さらに、東京ビッグサイトで3/3~3/6の4日間開催される流通情報システム展「リテール
テックJAPAN」の同時開催セミナーで、本誌編集部企画による「トヨタ生産・物流方式で
本当にできる、流通/物流現場改善~目からウロコの着眼点とイトーヨーカ堂・日本郵
便の導入実践事例~」(3/4午後2時~5時)が開かれ、私も演台に立って詳しくお話しす
る予定です。今ならまだ申し込みが間に合うかもしれないので、ご興味のある方は下記
の公式ホームページより、3月4日の項目を見てくださいね。⇒
http://www.shopbiz.jp/rt/seminar/
* *
郵便を物流と言うことには違和感が伴うかもしれませんが、日本郵便、つまり郵便事
業会社が担当する郵便局のバックヤード業務と拠点間輸配送、個人・法人への集配業
務は、間違いなく物流であり、ライバルはヤマト運輸、佐川急便その他の宅配物流業
者。
日本郵便と提携した日本通運はまったくのライバルとは言えないとしても、同じ市場で
闘うプレーヤーです。
それらの取材を一通り終えての筆者の実感、「トヨタ生産方式が日本中の物流を活性
化しつつある」という現実について、ここで改めてまとめておきたいと思います。
もちろん製造業では、とうの昔にTPSがトヨタ本体からグループ企業、取引先を経由し
てライバルを含む他企業や他業種にも広く伝播し、それが日本の「もの作り」の強さの
基盤作りに大きく貢献してきました。今でも書店には数十冊の「トヨタ本」が並び、上辺
だけの導入では決して根付くことのないその難しさについても、多数の論者が数え切れ
ないほどの意見を取り交わしてきたと思います。
でも「物流」また「流通」ではまだ、今なお導入期にあると見ていい(厳しく言えば10~20
年の「周回遅れ」と言えるかも知れません)。日本郵便を含めて、物流分野における
TPS導入と改善の取組み、結果、課題だけに焦点を当て、詳細に論じた本や雑誌は、
手前味噌ですが今回の「マテリアルフロー」までほとんどなかったみたいです。
* * *
筆者が2年半前にトヨタ自動車・張富士夫会長に単独インタビューしたとき、張会長は
「私は豊田英二最高顧問(当時)から直接、トヨタ生産方式の発祥について話を聞きま
した。(中略)最高顧問は『それは君、煎じ詰めれば物流の改善なんだ』と言うんで
す」(月刊マテリアルフロー06年10月号・スペシャルインタビューより)と話していました。
「たとえば機械と機械の間の仕掛品の運搬や、部品を運ぶ動作の1つ1つに注目し、
流れをつないで運搬をなくす。運んだ帰りに情報を持ってくる仕組みがかんばん方式に
なっていく。(当初は)物流という言葉はまだありませんでしたが、そこに着目した工夫を
どんどん広げることで、新規設備なしでも効率を上げられました」(同、趣意)。
これは構内物流についての指摘ですが、張会長はその後国内・海外・部品物流を担
当する物流グループで改善に取組み、「ムダとりや少人数でリードタイムを短く、という
改善の考え方は製造ラインとまったく一緒。トヨタ生産方式は物流部門の業務改善にも
そのまま適用できることを実際に体験しました。それは『物流改善がトヨタ生産方式の
原点』だからです」とまで言い切りました。物流に携わる者にとって、実に励みになる言
葉です。
* * * *
このインタビューでは他業種へのTPS応用展開についても、筆者は尋ねています。張
会長は「トヨタ生産方式は、ものと情報が表裏一体になった仕組みですから、海外や国
内の他の業界で応用いただく場合も、同じ意味で通用する部分がある」とした上で、こう
注意を促しています。
「ただし、すべてに無条件に応用できるというわけではありません。…前提として『知恵
と改善』『人間性尊重』の2つがとても重要です…。現状に満足せずより高い付加価値を
追求し、そのために『現地現物主義』で知恵を絞り続けること。同時に、『相互信頼』『相
互責任』で従業員の成長を会社の継続的な改善・成長に結びつける企業カルチャーを
醸成することが必要でしょう。企業文化そのものにかかわる取り組みであり、一朝一夕
にうまく行くものではありません…」(同、…は中略)
確かにJIT配送を求めるトヨタ生産方式は「強者の理論だ」、またJIT配送のため道路に
列をなして時間を待つ納品車両は「道路を倉庫にしている」といった非難もあります。し
かし社内・構内の作業現場改善についてはそうした指摘も無縁で、TPSは「強い現場作
り」のバイブルになっていると言っていい。次回は物流現場への導入の取組み取材結
果から、ちょっとした総括を。
(次回につづく)
月刊マテリアルフロー 編集長
菊田一郎
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