09/03/17(265)
Column 「ちょっとマテフロ」
物流に“活”入れるトヨタ生産方式
その4/イトーヨーカ堂の店舗改善・全国展開へ
IY改善リーダーの平賀氏が今も印象に残る改善事例として挙げるのが、「惣菜加工
場の床の油」。惣菜を油で揚げる場所だから床に油がはねるのは当たり前だと、社員
も平賀氏も数十年来、思い込んでいたそうです…。
*
◆惣菜加工場の油
ところが、トヨタのアドバイスで「真因」を追求(なぜ、を5回繰り返して問題の真の原因
を突き止める)すると……総菜を挙げた油をフライヤーから抜いて捨て、洗剤で洗った
後の水を床に流していた、その水から分離した油が床の汚れの原因であることが判明
しました。水をシンクに流せば、床に油は溜まらない。工場の機械から油や切屑を床に
落とさない改善を重ねてきたトヨタには当然の切り口でしたが、「我々には思いもよらな
い発想でした。床に油がなくなったので、長靴で働いていた人たちがスニーカーで仕事
するようになったんです」と平賀氏。
「もう1つ、あるゆる場所でそれが何か、何をやるのか<見える化>する表示を徹底
したことが、現場の大きな変化でしたね」
例えばトレーでも台車でも、置き場を決めてそれを表示する。バックルームの商品置き
場も同じで、さらに補充用のかんばんチップを陳列台に用意し、在庫がなくなれば見て
すぐ分かり、注文できるようにしました。
* *
◆全国モデル店舗に改善展開
こうしてイトーヨーカ堂は大宮店で半年間、TPSの基礎と考え方、実践の仕方を学ん
で手応えをつかみました。続いて同年10月、2つ目のモデル店として松戸店(千葉県)
を選び、ここからはトヨタの手を借りずIYメンバーだけで取組むことにして、「店舗作業
改善プロジェクト」を立ち上げたのです。
対象を店舗全体に拡大、改善メンバーも12名に。近隣店舗の店長は15名ほど呼ん
でチームを組み、やはり教育を兼ねて一緒に取組みました。
これ以後、06年度まで3年半で全国各地13のモデル(パイロット)店舗とその周辺店舗
で3か月ずつ、改善プロジェクトを推進。その経緯と概要は月刊マテリアルフロー3月号
に詳しく紹介していますが、店舗により生産性向上、経費・ロス削減などテーマを変え
つつ、最終的には利益向上につなぐことを常に念頭に置きました。
共通する手順は、まず基礎としての2S(整理・整頓)徹底、次にムダを省き「正味作
業」を増やす取組みへ、という流れ。TPSでは、作業を;
・付加価値を生む「正味作業」
・付加価値は生まないが現状せざるを得ない「付帯作業」
・今すぐ省くべき「ムダ」
の3つに立て分け、ムダを排除し、付帯作業は削減し、正味作業を増やすことを改善の
目的としています。IYでも作業効率化による正味作業の拡大と生産性(売上/人数で
算出)拡大を、後には売上拡大もプロジェクトの目標に設定し、幅広い活動を展開しま
した。
モデル13店舗は関東中心ですが、北海道の福住店、兵庫の加古川店など遠隔地も
含みます。この間最大16名となった平賀氏ら改善専任チームは、交替で各店に単身
赴任し「ウィークリーマンションに3か月寝泊りして、今日も明日も改善」の日々を重ね
たていったのです。
(次回につづく)
月刊マテリアルフロー 編集長
菊田一郎
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