09/03/24(266)
Column 「ちょっとマテフロ」
物流に“活”入れるトヨタ生産方式
その5/イトーヨーカ堂の店舗作業改善事例
今回はシリーズ最後に、IYが3年半にわたる店舗作業改善プロジェクトで進めた、
具体的な取組みと作業改善事例を、いくつか見ていくことにしましょう。TPSの応用の
幅がいかに大きいか、よく分かります。
*
◆改善基準書作りから
「04年の和光店あたりから、[改善基準書]作りを始めました。在庫削減、バックルーム
改善、2Sの考え方その他の基準書で、徐々に他部門、他店舗に広げて行きました」
当時からの改善メンバーで今も店舗作業改善・開店プロジェクトのメンバーである吉田
裕之氏はこう話します。「衣・住・食・バックルームと、商品管理から物が入ってくる工程
など、それまでなかった基準、改善した基準を定めて行ったんです」
これはTPSの基本でいう「作業標準化」です。基準があって初めて作業の具合が見え
るようになり、比較・進捗把握可能となって品質向上・安定化が図れるからです。
そして2S。ある店の家庭用品のバックルーム(BR)ではそれまで、BR入口、什器、通路
に商品が雑然と積んであり、作業が不効率になっていました。BR内の商品配置も紙製
品・洗剤など日用品、鍋・フライパンなど家庭雑貨が旧態依然の分類で並んでいたの
です。
そこで後工程である品出しの効率を考え、広告商品やティッシュなどよく出る商品を
入口に近くに置く基準を決めて入れ替え、品出し作業を効率化しました。
◆「もとに戻せ!」
ここで興味深いエピソードを一つ。福島県の平店では、改装で肌着売場が2階に移動
した後も3階バックルームに在庫を置いており、そのつどエレベータで降ろして品出しし
ていました。これは非効率だ。
しかし2階BRには肌着を置く余地がない。そこで改善メンバーはまず2Sでスペースを空
け、直ちに肌着置き場を移動しました。
立派な改善でしょう。ところが、これを見た平賀リーダーはメンバーに、「もとに戻せ!」
と厳命したのです。なぜ?
「経験のある改善メンバーには問題点が一目で分かり、すぐ改善してしまう。でも売場
の人たちはその問題と改善の必要性を理解し、有難味を感じているのか? そうでな
ければ改善は決して現場に定着しない」と平賀氏はその意図を明かしてくれました。
なるほど、改善メンバーの独りよがりではその場で成果が上がっても、本来の現場力
アップにはつながりません。
そこで肌着置き場を再び、もと通り3階BRに戻し、どれだけ時間がかかっていたかを計
測。2階からならどれだけ早くなるか、現場の人たちが納得した時点で、改善をやり直
したそうです。
「5Sの中で整理・整頓・清潔・清掃より一番難しいのは、躾。誰もが2S/4Sと改善に取
組むだけの姿勢を躾け、現場に定着させることなんです」(同)とは、改善活動の本質を
突く言葉でしょう。
◆婦人服売場の作業改善
上の問題解決以降、店が本来やるべき「正味作業」を拡大する取組みに焦点が当て
られました。小売業の正味作業は売場で顧客に販売すること。ムダな仕事をなくせば
接客の時間が増やせるはず。
そこで店頭でどの仕事をどれだけの時間で作業しているかを全部チェックし、改善を進
めました。従来は売場のレジ回りでハンガー台車から品出し作業をしていたので、顧
客の邪魔になっていたのを「お客様優先」の視点で改め、BRで箱出し・ハンガーかけな
ど事前加工しておき、補充は手早く、小ロットで陳列できるようにしました。
その結果、品出しほかの作業工数削減で正味作業の接客時間を9%から29%まで高
めることに成功。総工数も低減することができたそうです。
* *
このほかにも、月刊マテリアルフロー3月号では店舗作業改善事例を紹介した後、
IYの委託先(同社の物流センターはすべて外部委託しています)物流現場の改善チャ
レンジについて、アパレル物流センターの現場取材事例をレポートしています。
いやあ流通・物流改善は奥が深い。これからも本誌は、連載コーナーを充実させ、現
場改善レポートを毎号お送りしていきます。
(シリーズ終わり)
月刊マテリアルフロー 編集長
菊田一郎
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