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09/07/7(280)

Column 「ちょっとマテフロ」

郵便もスーパーも“ものづくり”

東大・藤本教授のクロスオーバートークから



マテリアルフロー誌が「トヨタ生産方式と物流・流通改善への展開」シリーズのまとめに

掲載した、東大・藤本教授へのインタビューが好評です。わが国ものづくり経営研究の

第一人者の目から見た「目からウロコ」のトークを、ちょいと覗いてみると…。





東京大学大学院・ものづくり経営研究センター所長である藤本隆宏教授については、

多数の著書に加え経済産業新聞や雑誌、各種シンポジウムでも活躍中なので、多くの

方がご存じではと思います。


同教授がトヨタ生産方式(TPS)の研究の一環でそれを導入した日本郵便の現場にも訪

れており、同じ支店をマテフロ編集部も取材したつながりから、本誌としての初インタ

ビューが実現しました。


本誌の問題意識は、「自動車生産と全く異なる郵便・物流や流通の現場改善にな

ぜ,TPS導入チャレンジが開花したのか」、教授の意見をぜひ聞きたい、というもの。結

論を一言だけ言うと、「郵便も流通も,設計情報をものに乗せて流し,顧客満足を得る“

ものづくり”である」という、あっと驚くクロスオーバートークに展開したのでした。


とにかく藤本教授の言い回し、言葉の表現が新鮮で素晴らしい。さらに多くのメルマガ

/サイト読者の皆さんにも意見を聞きたく、数回に分けてその主な内容を、まずマテフ

ロ6月号から覗き見してみます(聞き手は筆者)。


*           *


 ——藤本先生はものづくり経営研究の一環として,トヨタ生産方式(TPS)をはじめとす

る日本企業のものづくりシステムを研究されつつ,マテリアルフロー誌が最近取り上げ

た日本郵便(郵便事業会社)やイトーヨーカ堂など,異業種の現場改善に応用展開され

た事例もカバーしご著書でも紹介されています。日本郵便では03年1月より初めにTPS

を導入した越谷支店からご覧になっているそうですね。

[藤本] 越谷支店では初めての試みでもあり,リーダーたちはTPS導入に燃えているの

に対し,当初は全く異なる自動車メーカーの方式が本当に役に立つのか,まだ現場で

は疑心暗鬼で「お手並み拝見」といった姿勢の人もあったように感じました。

そのままだと悪くすれば「俺たちは違うんだ,放っといてくれ」というひきこもり型の管理

思想に陥る危険もあったでしょう。

しかしそれから5年を経た昨年,モデル支店として大きな改善成果を生み出した拠点を

見てほしいと言われ,6月に三郷と熊本北,12月に新仙台支店を見に行きました(本誌

でも本年1月号に三郷,2月号に松山西のモデル支店現場ルポを掲載)。

すると,明らかに変わっていましたね。「違うからやらない」のでなく,TPSとは違う自分

たちのやり方,「JPS」(Japan Post System)をやっているんだ,という心意気が感じら

れました。



——本誌取材でもリーダーと現場が,TPSを消化した「JPS」に強い誇りを持って取り組

んでいることが伺えました。

[藤本] ものづくりにおいて,ものと情報が流れる中で,「設計情報を仕掛品に転写する

こと」が生産だと私は見ます。ムダとは,その設計情報が転写されない状態のことを指

します。

TPSの本質も,そのムダを減らして顧客へ向かう設計情報(付加価値)の流れを良くす

ることにあると,私は見ています。



——三郷など日本郵便の改善後の現場をご覧になって,とくにどんな点を評価しておら

れますか。

[藤本] 三郷に行ったのは6月初めの営業日の,書留便が普段の3倍来るという日で、

これをうまく処理しないとボトルネックになり,配達の出発が遅れるなど全体の作業が滞

る恐れがありました。しかしその日は,3倍の書留も何事もなくスムーズに処理され,こ

れはなかなか凄いなと思いました。


なぜそうできたか。1つはいわば「津波警報」が前日に分かるので,負荷を事前に予測

し,前日の夕礼で準備した上,当日届いた実数に合わせた人員対応を朝礼で直ちに行

うようになっていたからです。


とくに実際に届いた郵便物の量を「作業原単位」で見える化できるようにしたことが,最

大のポイントでしょう。これをもとに,どの工程の誰に作業が集中するか,マグネット

ボードの作業管理板でボトルネックも明らかにし,不足する工程には労力を追加投入す

ることが可能になっています。




(つづく)







 




月刊マテリアルフロー 編集長

菊田一郎



 

 


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