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郵便もスーパーも“ものづくり”(2)
09/07/14(281)
Column 「ちょっとマテフロ」
郵便もスーパーも“ものづくり”
その2
/
東大・藤本教授のクロスオーバートークから
東大ものづくり経営研究センター所長の藤本隆宏教授にきく「TPSと郵便現場改善」
編。第2回はサッカーにも通じる「日本的な多能工のチームワーク」を巡り、製造・流通・
物流の壁を超える教授の自在なトークをお楽しみください(聞き手は筆者)。
*
——
日本郵便の「作業原単位」は,「1人が15分に」行うべき郵便物の処理数を荷姿
と作業内容(区分・集配)ごとに標準化して設定し,その朝届いた郵便物をすべて,こ
の1単位ごとに1ケースに入れて作成します。
これにより今日行う作業必要時間はこの「ケース数×15分」と定量化でき,工程ごと
の必要配置人数が出せるので,これに応じた作業計画を直ちに設定し,不足分はフレ
キシブルに応援態勢を組む,というものでした。
[藤本]
(作業原単位分析で明らかになった)ボトルネック工程に応援に行く多能工
は,日本郵便では時に課長代理や課長だったりするんですね。自動車メーカーで製造
課長がラインの応援に行くことはない。郵便の現場にはそれが自然にできる慣行があ
る,仲間意識の強い職場だということも柔軟な応受援を可能にしてくれるのでしょう。
とくに配達の仕事で,何丁目から何丁目まで,各個人宅のポストにバイクや自転車を
ピタリと止めて,配達作業を滞りなく行うには,プロのノウハウと経験が必要です。臨
時アルバイトなどがきちんと標準時間内に行うことは難しいので,ピーク時は主に正社
員が配達に回る応援態勢をとる支店(例えば熊本北)もありました。
——集配業務について,従来は誰がどの配達区分の担当と人数を固定していたの
を,担当者が前後の区分もマスターして多能工化し,配達量が少ない時には前詰めし
て少人化(作業時間短縮)・省人化(1人分まで短縮し担当人員を減らす)可能にする
システムは,松山西支店が開発したものだそうです(マテフロ09年2月号のレポート参
照)。
[藤本]
トヨタなどの生産ラインでも多工程に対応できるようにしておくことが多いので
すが,それを実際に郵便の作業に導入したわけですね。やはり原単位の導入で,「生
産性の意識」を全員が持つようになったことが大きいでしょう。
新仙台支店では夜中に年賀状の作業を見ました。一時年賀状の配達が遅れて批判
されたことがありますが,それが最近改善されました。区分などの内務作業と集配の
外務作業について,非正規社員と正規社員の生産性の差を原単位から見ると,集配
の方が大きく,内務は非正規社員でもある程度対応できる。
そこで限られた人数の配分で配達にベテラン・社員の主力を投入し,正確でスムー
ズな配達を実践できるようにしたわけです。普通なら「城を守る」のは正社員と思われ
がちですが,その発想をひっくり返して成功した。それぞれが生産性の意識を持つこと
で,流れ作りが可能になっていると思います。
原単位化で全体の作業時間,誰を助けに行くべきかが見える——これはスポーツで
言う「周辺視野」と同じで,サッカーでも自分の周囲の状況が見えているからオフェンス
でもとっさにディフェンスに入れる。多能工化しいつでも応援に行けるようにするのが,
チームワークの基本です。
サッカーなどに見られる、周辺視野で連携する「多能工のチームワーク」。これが日
本の現場を支えてきたのだと思います。チームワークは普段の標準作業でなく,「異常
対応」にこそ活きるものです。現場の実力は標準作業だけでは分からない。何か問題
が起こった時にチームの実力が分かるんです。
(つづく)
月刊マテリアルフロー 編集長
菊田一郎
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