流通研究社の物流ポータルサイト□□Logistics System Station□□

WWW を検索 LSSサイト内を検索
TOP > コラム > ICT&アジア;宅急便の次世代戦略(3)



10/05/25(322)

Column 「ちょっとマテフロ」



ICT&アジア;宅急便の次世代戦略

その3/ヤマト運輸・木川社長が語る次の一手


月刊「マテリアルフロー」5月号特集「物流現場のIT武装」のヤマト運輸・木川社長 イン

タビューからの発言ポイント紹介。最後にいよいよ、同社のアジア展開戦略について

話を進めます(趣意・聞き手は筆者)。



◆シンガポール、上海進出、アジア展開の展望は

同社はこの1月、シンガポールと上海に配送拠点をオープンし、自社展開による宅急

便アジア進出の第一歩をしるしました。


『アジア市場への展開は、既に10年前に台湾の統一グループに宅急便のノウハウを

提供し、弊社10%出資の形で事業を開始し、大成功を収めています。ですから宅急便

のビジネスモデルがアジアマーケットの現地に根差し定着、拡大させることは可能だと

いう確信はありました』


『その上で今回、自社展開を決めた理由はいくつかあります。国内の物流市場をみる

と陸運の扱い規模は構造的に減少を続ける一方、宅配など小口貨物市場はBtoC、

BtoBとも伸び続けてきましたが、かなり成熟段階に入ってきた。だから海外に販路を

広げる、という戦略はもちろんあります』


『しかしそれ以上に、今や物の流れがボーダーレス化し、宅急便ネットワークも国内だ

けでは1つの「パーツ」に過ぎなくなってきた。とくに輸出入とも大きく拡大し強く結びつ

いたアジアにネットワークをつなぐ必要がある。ゆえに必然的に出て行かねばならな

い、というのがより大きな視点です』

よくある「日本企業の進出に付随して出る」、というのはヤマトの志に照らすと「マイ

ナーな理由」だそうです。


『日本、台湾で成功したようにアジア各国主要都市でも現地の物流革命、生活革命を

進めることへの期待をひしひし感じます。ならば国内と同じく世のため人のために役立

つ事業として、アジアになかった高品質の宅配サービスを自分で展開しよう。結果的に

日本とアジアのネットワークをボーダーレスにつないだ宅急便サービスを提供できるは

ずだ、という理想を掲げ、取り組みを開始しました』





これらアジア2か国への進出は、今後にどんな事業展開戦略を描いているのでしょうか。


『今年1月8日にシンガポール、1月18日に上海で事業をスタートしましたが、この2つ

にかけた思いは少々違います。

上海進出の本当の狙いは、中国の国民に良いサービスを提供することです。ただ宅

急便の高品質サービスが地元に根差し受け入れられるには、地域住民の経済・所得

水準、社会インフラが一定レベルに達していることが必要です。でないと値段が高く受

け入れられない。それをクリアし、かつ日本とのつながりの強さから言って、中国に第

一歩をしるす地は必然的に上海になりました』

『それに対しシンガポールは、既に1人当たり国民所得は日本以上でインフラも立派。

ただし市場規模は小さく事業の広がりは限られます。

しかしシンガポールはアセアンのハブになる。宅急便ビジネスを短期間で成立させ、タ

イ、インドネシア、マレーシア、ベトナムなどポテンシャリティの高い近隣のアセアン諸

国に展開したい。そのためのハブとしてここに橋頭保を築き、各国に人材なども供給し

たい・・・・』


ヤマト運輸が決断した「シンガポールと上海」への自社独資での進出は、「アセアンと

中国」という2つの大きな市場での事業展開を象徴的に表している、ということだったの

でした。





以上、3回で駆け足で見所を紹介してみましたがいかがでしょうか。「ものづくり」に続く

日本発の、世界に誇るビジネスモデルの展開という面からも、実に頼もしい。今後の展

開に注視したいと思います。

(シリーズ終わり)






 




月刊マテリアルフロー 編集長

菊田一郎



 

 


バックナンバー

>>最新号 >>2009年 >>2008年 >>2007年

ご意見・ご感想

ご意見・ご感想はこちらからお願いいたします。

お問い合わせ