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Column ちょっとマテフロ

間違いだらけの物流コスト管理

2/Jコスト論”の原点、そして試行錯誤


トヨタ自動車・物流管理部長時代の経験から、時間の概念をコスト計算に組み込む「Jコスト論」を編み出した田中正知Jコスト研究所代表取締役(ものつくり 大学名誉教授)は、その発想の原点にこんな体験があることを、マテリアルフロー編集部とのインタビューで語ってくれました。

 田中氏の親父さんは指物師を営んでいたそうです。終戦後の混乱期も、箪笥や鏡台、机などの家具を自宅の作業場で作っていました。家具ができあがったら、その日のうちにリヤカーに積み、顧客に届ける。それは、小学校から帰った田中少年の大事な仕事でした。

 なぜ、できたその日のうちに運ぶのか。一刻も早く届けて、一刻も早くその代金=キャッシュを回収して家に帰らなければ、今日・明日の食事代にもこと欠い てしまう。そんな厳しい時代だったからです。「代金がもらえた日は、夕飯の魚が尾頭付きになったりね……だからキャッシュフローがどれほど大事か、小学生 の時から皮膚感覚に染みついていました」と田中氏。

 その確信があるから、物流費低減のためとは言え、高価な資産(完成車1台の原価は概ね150万円以上)、つまり「お金」を「1日寝かせて」おくことが、 理にかなっているとはとても思えなかったというわけです。そこで田中氏は考えました。その判断が正しくないことを、どうすれば証明できるか。そもそもトヨ タ生産方式で進めるリードタイム短縮が、キャッシュフロー改善に資することをハッキリ説明する理論体系がないこと自体、大きな問題なのだ……。

 
 現在の管理会計においては、「利益率」が評価基準になっています。
(1)100万円で仕入れた品物を、翌月110万円で売った
(2)100万円で仕入れた品物を、翌々月110万円で売った
・・・この両ケースとも、利益率は「同じく10%」です。でも(2)でこの品物は1か月間、在庫として倉庫で無為に眠っている。それがなぜ同じ評価になる のか。それは「時間」が評価指標として組み込まれていないからです。だからリードタイムを削減し顧客に評価されても、財務的には、つまり会社の経理部から は何の評価も得られない。

 トヨタ生産方式の2大支柱の1つ、ジャストインタイム(JIT)は、この「時間」の価値を追求し、徹底的に時間と在庫、物流のムダを排除するコンセプトだったはず。ところが現在の管理会計では、意外にもJITの効果を数値で表すことができないのです。



 翻って金融の世界では、はるか昔から時間が重要な評価指標となっています。そう、「利回り」です。
(1)100万円を貸し、1年後に110万円を回収する
(2)100万円を貸し、2年後に110万円を回収する
ここでは、
(1)→利回りは年10%
(2)→利回りは年 5%
という合理的な差異が当然のこととして、社会全体で明らかに認知されていますね。 

 



  では「利回り」の概念を生産・物流工程の原価計算に導入すると、どうなるでしょうか。
(1)1台100万円の車を10日かけて作り、届けていたのを、1日縮めて9日とする
(2)製造・物流リードタイム改善率は10%となる
(3)その評価を金額に換算する。現在の金利は年1%程度なので、100万円の日利約0.03%から、1日分の改善効果は「約30円」?
・・・リードタイムを1割も短縮した効果が30円とは、どう考えても腑に落ちないけれど、ないよりはまし。田中氏の主張でこの金利分に加え、在庫の「ス ペースコスト」も会社は評価に算入してくれることになったそうです。ところが車両保管場の償却費で計算しても1台・1日分のスペースコストは、20円に届 くかどうか。

 最後に、こうして計算してみても、100万円の車のリードタイム1日短縮実現は「50円の原価低減効果があった」という報償の評価に使われるだけ。実際の原価計算には反映されない、架空の数字に過ぎないのでした。


(次回につづく)

月刊マテリアルフロー 編集長
菊田一郎

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