スーパーはロジと「独自化」で生き残る
その4/スーパーマーケットを巡る環境変化と物流の役割
いよいよ今年も終わり。年末最後のコラムは月刊「マテリアルフロー」12月号の特集か
ら、日本スーパーマーケット協会・大塚明専務理事の話はこれからのスーパーマーケッ
トのあり方を展望。今年も一年、ご愛読有り難うございました!
◆「食」はドメスティック
従来のやり方では利益を上げにくい時代になり,過去に我々がリスクを取っていなかっ
た川上に収益源を求めざるを得なくなっています。
物流センターや商品開発など,従来の卸やメーカーの利益に食い込んでいく考え方です
が,もう一本の軸が東アジアにおける海外戦略です。グローバル化は小売全体としては
今後,必然的に考えていかねばならないテーマの1つでしょう。
ただし「食」はドメスティックですから,食品を中心としたSMには難しいと思います。東北
のスーパーが首都圏に出るのさえ,食文化の違いで容易ではない。しかし非食品を多
数扱うGMSは海外に出やすいでしょう。
ネットスーパーのような新業態もオーバーラップしてきますね。
私たちがここまで生き残ってきたのは,関連業種を食品スーパーという業態でまとめて
ドミナンスにしてきたからです。
しかし今では,ワンストップでほしい品物が買えることが必ずしも有利でなくなっていま
す。ワインは通販やワイン専門店で買うとか,若い人達の買い物の習慣が変わり始め,
コンビニとも通販とも戦う時代になっている。食品スーパーの業態そのものが変わって
いかねばならないでしょう。
◆ネットスーパーも1つの独自化
ネットスーパーは実に便利ですが,物流コストがかかる。それをロジスティクスの仕組み
で吸収できるまで効率性を高められれば,一気に伸びる可能性はありますね。
とくに今,高齢化の進展で消費量=売上が減る中で,総人口が減少を始めました。人
口が1割減ると売上は2割,3割減ります。逆に人口増加の時代は,若い人が多く子供
も生まれるので,1割人口が伸びると売上は2割,3割伸びたのです。
このシビアな状況の中,先述した坪効率を高めるには様々な手段で売上を作らねばな
りません。それが独自化なのです。現在のSMで一番利益が出しやすいのが1万アイテ
ム位,450~500坪前後,最大で800坪くらい。大手は平均600坪ほど,最大で1000
坪くらいでしょうか。
ネットスーパーのようにお届けまでするという独自化もあり,アイテムを絞って分かりや
すく売るという独自化もある。そのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が,情報であ
り物流です。その上に,様々に独自化された店,売場が立ち上がるのだと思います。
◆地域のコミュニティとして
食品スーパー業界としての今後の課題は,やはりお客様にいかに近づくか,でしょう。お
店に来て頂く従来の「待ち」の姿勢ではいけない。
例えば,今日本の地域社会にはコミュニティが失われています。それなら毎日営業して
いる地域のスーパーマーケットがコミュニティとしての役割を果たせないか。
雑誌やインターネットでも,最近は一方的に情報を発信するだけでなく,レスポンスを求
め,双方向のやりとりをバーチャルに立ち上げていますね。かつてのように家族や地域
でのやりとりが少なくなっているからでしょう。
ここに来ると仲間がいる,店長や店員と立ち話をし,こんなメニューを紹介してもらった
とか。そうしてお客様との距離感をなくし,より近づくというのがキーワードになると思い
ます。
◆現場の判断を活かす
「近づく」とは「仕掛ける」ということです。テーマを持って売る。隣の店では売らないもの
を売る。その商品がすぐ届くということが大切です。
今までは全店に同じ商品を朝から晩まで揃えておくことがスーパーのロジスティクスでし
た。夕方しか間に合わない,全店舗分揃わないものは買わないとか。しかし,今では新
鮮なものが入るなら夕方に一部の店でしか売れなくても売るように変わってきました。
そうした個店経営のためには,現場の判断力を活かすことが重要です。店で働く人の能
力をどれだけ高められるか,そのため本部がサポートする仕組みがどうできている
か。
物離れの中,売上を作るには新しい商品を提案するしかない。それは上から仕掛けて
も無理で,お客様の立場に立った売場がどう作れるかなんです。それには店長やもっと
現場に近い主任,あるいはその地域の生活を一番知っているパートさん。
ヤオコーでは「独自化」のためにそうした現場の人たちに権限を与えています。より主体
的な責任と権限の中で,意欲を持って挑戦してくれるパートさんも増えてきました。
そのためにも物流と情報の基盤が必要なのです。それなしに個店経営をやれば大失敗
しかねません。今後も独自化を目指す小売業にとって,物流・ロジスティクスの重要性は
さらに増していくだろうと思っています。
(シリーズ終わり)