Column 「ちょっとマテフロ」
間違いだらけの物流コスト管理
4/在庫・待ち工程のムダを“見える化”する
ではイントロを終わって,いよいよ今回と次回で,田中正知・Jコスト研究所代表が編み出した「Jコスト論」を物流管理に生かす考え方について,月刊「マテリアルフロー」10月号特集記事からポイントを抜き出しつつ,コメントを加えていきましょう。
それは物流管理・オペレーションの評価基準を大きく変革する可能性を孕んでいると,筆者は思います。
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田中氏は,まず自作の“Jコスト図”を筆者に示し,その基本を説明してくれました。図については本誌を見ていただきたいのですが,これは横軸に時間,縦軸
に投入したコストの大きさを表し,工場内で1つの部品がA→B→C……H→Iと加工工程を流れていく状況を示したものです。
ここで,各工程に投入された時間とコストの積は,「資金量」を表しています。これを田中氏は「Jコスト」と命名しました。単なるコスト=金額(単位は円)
と区別し,時間(単位は日)との積,<円×日>で資金量を表す,と言う定義がミソ。「J」の名は「時間」「JIT」から採用したものだそうです。
コストは各工程でα,β…と新たに投入され,順次積み重ねられていきます。するとこの部品の加工全体に要する資金量は,
投入資金量=Jコストの合計=a+b+c+…h+i
となり、グラフでは線で囲まれた部分の面積で表現されます。
従来の会計手法では,粗利を総費用で除して「利益率」を計算するだけにとどまっていたのですが,Jコスト論では「時間とコストの積」を資金量ととらえ,粗利をこの資金量で除したものを「利回り」とする。そしてこの「利回り」を収益性の評価指標とするのです。
文字だけで、お分かりでしょうか?
このJコスト図の考え方は、製造現場に限らず,物流センターの現場分析にも応用できるはずです。
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田中氏の示してくれたJコスト図には、コストが投入されていない工程がいくつかあります。これは何でしょうか。
新たに費用が投入されている工程C,F,Gはそれぞれの「加工工程」で,付加価値を生み出しています。
これに対し費用が投入されない工程A,B,D,E,H,Iは……?
それは「在庫・待ち工程」であり,付加価値を生みません。それどころか,資産としてのキャッシュの流れを阻害し,滞留させてしまっています。このことが,Jコスト論で初めて捕捉されるというわけです。
「実際の生産工程で分析してみると,この図以上に“待ち”の時間が多いことがよく分かります。そもそも,この待ち時間を減らそうとしたのが,トヨタの“かんばん方式“なんです」と田中氏。
ところが前述のように,かんばん方式によってリードタイムを削減しても,その効果は管理会計では表に現れず,財務部門からはちっとも評価されない,というおかしな現実があったのです。
それが投入した時間とコストの積を基準とする上の方法なら,はっきり数字で表せる。かんばん方式まで行かなくても、現場の工夫による様々なリードタイム削減効果も,この手法によって初めて定量評価できるということになります。
するとJコスト図は,全工程に投入されるコストと時間=資金量を「見える化」するという,類のない分析ツールということになるでしょうか。
(次回につづく)