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Column 「ちょっとマテフロ」

間違いだらけの物流コスト管理

8/SCMパフォーマンスを測る指標


◆SCMの評価指標は「棚卸資産利益率」


少し前のJコスト図の解説で,コストと時間の積で導いた資金量「Jコスト」は,製品1単位の「棚卸資産」に相当し,「粗利益/棚卸資産」で算出する「棚卸資産粗利益率」が重要な評価指標になることに触れました。

田中氏はこの棚卸資産,棚卸資産粗利益率こそ,製造業のサプライチェーン・パフォーマンスを測る指標になると提案しています。

「トヨタ在職時代に懸命にSCMに取り組みましたが,そのレベルを測る指標はありませんでした。しかしJコスト論で“棚卸資産の低減”が収益率の向上に直 結することが明らかとなります。だから,棚卸資産に対する粗利益率でみれば,企業全体のSCMレベルが一番つかめるのではないかと思います」

運賃を惜しむ余り,より大ロットで,長時間かかる生産・物流ばかりを選択していれば,棚卸資産が増えてしまう。逆にリードタイムを短縮すれば,棚卸資産の 低減として反映され,リードタイムが十分短縮できれば運賃が上がっても収益は上がる。それは運転資金の回転率向上と見てもいいわけです。

「しかし物流オペレーションの現場では,この指標と無縁の判断が行われています。倉庫の在庫は気にするものの,物流の途上,トラックや船の中まで含めたら,どれだけの輸送中在庫が並んでいることになるか。それをもっと考えようと言うことです」



以上に取り上げたJコスト論の解説レポートを含む月刊「マテリアルフロー」10月号特集では,こうした物流関連の実績評価指標に焦点を当て,有名な SCORの最新メトリクスなどを紹介しています。しかし田中氏は,国際舞台で世界の大手企業と戦い続けた製造業の管理経験から,客観的な指標を元に優良企 業との比較を行うベンチマーキングについては,こんな注意を促していました。

「点数付けの基準は個人の見解で異なります。外部の採点に任せるだけなら,社長は何をするのか。また同じ点数になるのは他社と同じことをしているというこ とで,他と同じことをしていたら負ける,手の内をさらけ出したら負ける,ということに日本の企業はもっと注意すべきでしょう。漫然としていたら,欧米企業 にしてやられる可能性がありますよ」

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ところでトヨタ方式の一環をなす現場改善の手法も、いまや世界共通語の「カイゼン」としてあまねく知れ渡っています。でも田中氏はJコスト論の観点から, これを収益向上策とは次元の違う手法として区別すべきことを強調しています。もっとも同氏の観点は、あくまでももの作りを核とする製造業の場合なので、流 通業・物流業のケースではまた異なると思うのですが……氏いわく;

「現場改善に,原価低減を期待してはいけない。原価低減はいかに儲かる商品を企画・設計し,安く購買し,儲ける仕組みを作るか,つまり経営者とホワイトカ ラーの仕事です。軍隊で言う現場の部隊が,自分で原価低減などできません。“経費節減のため弾を撃たない軍隊”が,役に立ちますか?」

改善は現場の作業者がIEなどを学習し・適用する中で成長,スキルアップを促すことを主目的とするもの。工場の生産現場の場合,改善成果が上がっても多く は1%レベル。その労務費は原価全体の5~10%であり,改善効果は0.05~0.1%にしかならないので,原価低減への寄与を期待すべきものではな い……。

この点、「生産ライン」のない流通・物流の現場なら、その比率はグッと上がるので、話は少し変わってくると思いますけれどね。

「現場に求められるのは,ルールを守る規律と,決められた仕事をより短時間でこなし,少しでもリードタイムを短縮するスピード。原価構成は購買と設計で決 まり,売値は営業で決まる。現場が収益を左右できる余地は小さい。その責任を現場に押し付けるとしたら,経営者やホワイトカラーは一体何をしているのか。 多くの日本企業が,勘違いをしている気もします」

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舌鋒鋭い田中氏の痛快な話はまだ続いたのですが,本誌の特集レポートはここまでとしました。しかし物流分野にこの発想をぜひ伝えたいという田中氏の思いを受けて、現在続編も企画中。その際は、本コラムでもまたご紹介することにしましょう。

(シリーズおわり)

月刊マテリアルフロー 編集長
菊田一郎