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富士通研究所と富士通、シート搬送機構の動的シミュレーション技術開発



(株)富士通研究所と富士通(株)は、ゴム部材による積み重ねたシートの摩擦分離(積載シートから1枚を分離して取り出すこと)やシート搬送・収納機構の動的シミュレーションを行う技術を開発した。

同技術は、Livermore Software Technology Corporationの非線形動的構造解析ソフトウェア「LS−DYN
A」を応用したもので、これによりプリンタやドキュメントスキャナをはじめとする機器内のシート搬送現象の挙動解明や性能評価などが装置の試作なしに可能になるため、開発の大幅な効率化と、信頼性の向上が図れる。

近年、プリンタやドキュメントスキャナ、コピー機、ATMなど、ゴムの摩擦力を利用して、コピー用紙やはがき、紙幣といったシートの搬送・分離を行う機器は、多量なシートを高速に処理する必要があるため、高い信頼性が要求されている。

従来、製品開発の際には装置を試作して何度もシート搬送機能の評価・改良を繰り返す必要があり、開発にかかる工数が膨大だった。

また、装置の開発工数の削減には、シミュレーション技術が有効だが、シート搬送機構において発生する摩擦挙動や静電気による用紙吸着現象のシミュレーションを行うことは困難だった。

さらに、一般的な摩擦現象では静摩擦係数が動摩擦係数より大きいのに対して、ゴム部材とシート(特に紙)においては動摩擦係数が大きくなるという特殊な摩擦挙動を示す場合があり、通常の摩擦係数を定義するだけでは十分に現象を再現することができなかった。

レーザープリンタなどでは、粉末のトナーで生成した画像を静電気の力で用紙に写し取って印刷するが、この静電気力が用紙の安定な走行に与える影響も調べておく必要があったが、この調査も非常に困難なものだった。。

両社は上記課題を解決するため、以下の2つのシミュレーションを行う技術を開発した。

1.摩擦挙動のシミュレーションを行う技術
ゴムとシート間における特殊な摩擦挙動のシミュレーションを行う技術を開発。「LS−DYNA」の機能を使って、接触定義の最適化およびゴムとシートが接触した時に生じる力を表現する方法を開発することにより、特殊な摩擦挙動のシミュレーションを行うことが可能になった。

2.静電気力をシミュレーションする技術 
レーザープリンタなどにおいて、紙にかかる静電気力の理論式を導き出してプログラム化し、「LS−DYNA」の外部プログラム追加機能に適用することにより、静電気力による用紙吸着現象のシミュレーションを行う技術を開発した。

今回開発した技術を、ATMの紙幣収納機構の開発に適用して実証実験を行ったところ、収納・積載スタッカにおいて、排出されてきた紙幣を高速回転するゴム製羽根車で引き寄せて端部を揃える挙動のシミュレーション画像と、高速度カメラによる実写映像がほぼ一致し、シミュレーションが実機現象を再現していることを確認した。


このATMの実証実験においては、2本のゴム羽根同士が接触しながら紙幣に接触している状態やゴム羽根のしなり形状などの動的なシミュレーションが行え、実機では測定できなかった紙幣の引き寄せ力・挙動などが詳細に評価できた。これにより、製品の設計開発段階でゴム羽根の本数を減らすことができ、コストダウンが可能になった。

また、連帳紙用高速レーザープリンタ開発の実証実験では、実際には観測不可能な装置内の用紙挙動のシミュレーションを行うことができ、静電気力によって用紙が浮き上がる現象が解明できた。これにより、製品の信頼性向上に貢献した。

本技術により、積載シートの摩擦分離やシート搬送・収納機構の挙動解明・性能評価などで装置の試作回数を低減することができ、開発の大幅な効率化と信頼性の向上が図れる。